【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 今日のお茶は、せっかくだからとホロウード流のものにしてみた。冬の寒さが厳しいホロウードでは、身体を温めるためにスパイスの入ったジャムを少量入れて飲むことが多い。甘く独特の風味を持つジャムは、紅茶に入れるとまろやかで薫り高い味になるのだ。久しぶりに祖国を思い出させるその香りに、ルフィナは少しだけ懐かしい気持ちになっていた。

 その時、四阿のまわりを複数人の男が取り囲んだ。何事かと思わず立ち上がったルフィナに、動くなと短く命じる声がする。

「……誰なの」

「ホロウード王女、ルフィナ殿下ですね」

 近づいてきたのは、アルデイルの騎士服を着た壮年の男だった。四阿の周囲を取り囲んでいる男たちも、同じ制服を身に纏っている。男たちの表情は皆険しく、ルフィナをにらむように見つめている。ルフィナのことをホロウード王女と呼ぶあたり、どう考えても友好的な用事ではなさそうだ。
 黙って見つめ返すルフィナの腕を、騎士の男は掴んだ。その手は乱暴ではないものの揺るぎなく、振りほどくことはできない。

「あなたに、アルデイル王国に対する反逆の疑いがかけられている。我々とご同行くださいますか」

「反逆、ですって?」

 思わず目を見開いたルフィナを、騎士の男は表情を変えずに見下ろす。

「詳しい話は、のちほどゆっくりと聞かせていただきます」

「姫様……!」

 背後でイライーダの悲鳴が聞こえたが、ルフィナは彼女に向かって黙るようにと目くばせをした。事情は分からないが、ルフィナに何らかの疑いがかけられている以上、ここで抵抗してもいいことはない。
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