【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 アルデイルに来てからルフィナが文字を書いたのは、結婚式の際に証明書にサインをした時だけ。手紙に添えられていたというサインはそれに似せているかもしれないが、普段の文字まで似せることは不可能だろう。
 そう思って男を見上げると、何故か蔑むような笑みを向けられた。

「なるほど、それを理由に疑いから逃れるつもりだったということか。手紙の文字は酷く崩してあったから、筆跡を比べたところで意味はない。そのためにわざと読みにくい字で書いたんだろう?」

「そんなわけ……」

「今、別室であんたの侍女も取り調べを受けている。手紙を渡した実行犯は、あの女だろうからな。どうする? 王女様。侍女が全て勝手にやったことだと、自分は白を切るかい? そうすればあんたは無事だ。侍女一人に罪をかぶせて逃げ切るか?」

 唇を歪めて笑う男の言葉に、ルフィナは息をのんだ。確かにこれは、ルフィナ一人の問題ではない。イライーダも疑われるに違いないのだ。同じように捕らえられている彼女は、どんな扱いを受けているのだろうか。
 ルフィナは震える手を握りしめると、何度も首を振った。

「私も……私の侍女も無実です。何もしていません」

「その威勢の良さが、いつまで続くかな。早く全てを自白した方が、身のためですよ」

 呆れたように笑った男の言葉に、ルフィナは黙って拳を握りしめた。
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