【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜

無実の証明

 牢を出たあと、カミルはルフィナを強く抱きしめた。その腕はぶるぶると震えている。

「すまない、ルフィナ。まさかこんなことになるなんて……。辛い思いをさせてしまった。本当に申し訳ない」

「大丈夫です。カミル様が信じてくれたということだけで、私は救われる思いです」

「だけど、こんな……」

 泣き出しそうに顔を歪めたカミルは、もう一度ルフィナの身体を抱きしめると、部屋へと急いだ。


 部屋に戻り、軽く身を清めてもらったあと食事をとる。絶食に近かったルフィナを気遣ってか、スープと柔らかいパンだけの食事を終えると、ようやく人心地つく。イライーダも保護されて、別室で休んでいるという。

 カミルはずっとルフィナのそばにいて、抱きしめるように肩を抱いてくれていた。消耗はしているけれど、カミルのぬくもりを感じているだけで活力が湧いてくる。

「俺は、きみを陥れようとした犯人を捜すために父上と話をしてくる。ルフィナはここで休んでいて。信頼のできる者を見張りにつけておくし、俺以外の誰も立ち入らせないようにする」

「それなら、私も一緒に……」

 立ち上がろうとしたルフィナを、カミルが首を振って止める。

「だめだ、ほとんど眠っていないだろう。無理はさせたくないんだ」

「平気です。私にかけられた疑いは、私の手で晴らさねばなりません。陛下にも、私の口からちゃんとご説明しないと」

 まっすぐにカミルを見上げて告げると、しばらく逡巡するように黙った彼は、渋々といった表情でうなずいた。

「分かった。だけど、絶対に無理はしないで。しんどくなったらすぐに言って」
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