【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 心配そうに告げられて、ルフィナは大丈夫だという気持ちを込めて大きくうなずいた。

 ◇

 カミルに連れられて向かった先は、国王の執務室。そこには不安げな表情の王妃とアイーシャ、それからルフィナを四阿から連行した騎士の男がいた。ルフィナの尋問も主に担当していた男だ。役付きの騎士だろうとは思っていたが、騎士団長だったらしい。彼はまだルフィナへの疑いを捨てきれないようで、厳しい視線を向けてくる。

 ルフィナがソファに座ると隣にカミルが座り、守るように肩を抱いてくれた。それだけでルフィナは何も怖くないという気持ちになれる。だから、背筋を伸ばしてまっすぐに国王の視線を受け止めることができた。

 アルデイル国王は、カミルによく似ている。きっと彼が年を取ったらこうなるのだろうと思わせるような渋さを持ち、鋭い眼光を持つ金の瞳はカミルよりも少し細くつり上がって見える。
 厳しい表情はルフィナだけでなく騎士団長の男にも向けられていて、公平に物事を判断しようとする彼の姿勢を感じた。

「まずは、おまえたちが見つけたという証拠を見せてもらおうか」

 そう言って国王が騎士団長に証拠の提出を求める。彼は、懐から白い封筒を取り出すと、机の上に置いた。

「こちらが、その証拠です。先月入ったばかりの庭師見習いの男が持っていました。ルフィナ王女付きだと名乗った者から、この手紙を港へ持って行き、ホロウード行きの連絡船の船長に渡すようにと命じられたと話しています」

「ふむ。中をあらためても?」
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