【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 自らの出自を語ることに少し躊躇いはある。卑しい生まれの王女をカミルに差し出したのかと責められるかもしれない。
 だが、これを語らずに疑惑を晴らすことはできないだろう。
 ルフィナは小さく息を吐くと、手紙を見つめた。

「ですから、私から兄に手紙を出すようなことはありません。そのような親しげな内容など、ホロウードにいた時ですら、話したことはありませんでした」

 崩した字が語るような、アルデイルの生活のことなどヴァルラムに伝えるはずがない。
 ルフィナは手紙に目を落とすと、ある一文を指先で示した。そこに書かれていたのは、アルデイルへ両親を招待したいといった内容。母と王妃はきっと気が合うだろうとも書かれている。
 指先でなぞりながら読み上げて、ルフィナは苦い笑みを浮かべた。

「この手紙の中では、私の母は健在のようですが、実際には違います。母は数年前から毒によって昏睡状態が続いていて、外出はおろか起き上がることすらできません。もちろん意識がないので会話も無理でしょう。このことは公にはしていませんが、兄に確認していただいても構いません」

 手紙を書いた人物は、そこまでルフィナのことを詳しく調べなかったのだろう。側妃の状況は、ホロウード王城内では公然の秘密だ。
 ルフィナの言葉に、王は深くうなずいた。

「そなたの生まれや母君の病状は、こちらも把握している。兄君との関係についてもカミルから報告を受けていたから、そなたの言葉に嘘がないことも分かる」

 一度言葉を切り、王はルフィナをじっと見つめた。

「この手紙を書いた者は、そなたのことをよく知らないのだろうな。何とも粗末な」
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