【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 鋭い光を放つ金の瞳は、厳しくも微かな柔らかさを持ってこちらを見ている。その視線をまっすぐに受け止めたルフィナを支えるように、カミルがそっと肩を抱いてくれた。

 王の纏う空気は微かに緩んだが、ルフィナはもうひとつ身の潔白を証明するものを示すために、ゆっくりと手紙に向けて手を伸ばした。
 そこには、ルフィナを陥れようとした人物の何よりの証拠がある。
 ルフィナは吐き気を堪えつつ、封筒の端に挟まるように一緒に糊付けられた白い花弁に手を伸ばす。

「……これは、何の花でしょうか。恐れながら、騎士団長様にお聞きしても構いませんか?」

「これは――アルゥの花びら、だな。匂いもするし、間違いない」

 挟まっていたことに気づかなかったとつぶやきながら、騎士団長が封筒に顔を近づけて答える。それを聞いて、隣でカミルが小さく笑った。そして口元を押さえるルフィナを守るように抱き寄せる。
 カミルの匂いに包まれていると、アルゥの香りを嗅がずに済む。ルフィナは彼の香りを吸い込むように小さく深呼吸した。

「そのアルゥの花びらこそが、ルフィナが無実であるという何よりの証拠だ。見ての通り、ルフィナはアルゥの香りがとても苦手だ。食べるどころか、少し匂いを嗅ぐだけでこうして吐き気を催すほどに体調を崩す。それに、一般には出回らないアルゥの花をルフィナが手にするはずがない。手紙にうっかり挟まるほどに、花が身近にあるのは誰なのか――分かるよな」

 低いカミルの声に、騎士団長がハッとしたように姿勢を正す。

「っ、兎獣人の――サキーユ家」
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