【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 まさかルフィナにサッシュを身につけていないことを指摘されるとは思わなかったのだろう、ヴァルラムの頬に朱が走る。彼が苛立ちのままにルフィナの方に踏み出そうとするのと、カミルが守るようにルフィナを抱き寄せるのは同時だった。

「それは大変だ、長旅のお疲れが出たのかもしれませんね。ヴァルラム殿下、よろしければ奥の部屋で休んで行かれますか?」

「え、あ……」

 ルフィナをしっかりと腕の中に囲いながら、カミルが大げさな仕草で心配するような声をあげる。言葉に詰まるヴァルラムを見て、カミルはにっこりと笑った。

「あぁでも、ヴァルラム殿下には我が国の環境は少しお辛いかもしれませんね。――獣臭いこの国など、今後呼ばれたとしても二度と来てやるものか。……でしたっけ?」

「……っ!」

 カミルの低い声は、会場によく響く。その言葉のあまりの内容に、周囲はしんと静まり返った。
 目を見開いて信じられないというような表情を浮かべるヴァルラムに、カミルは目の笑っていない笑顔のまま自らの耳に触れてみせる。

「発言にはお気をつけて、ヴァルラム殿下。俺はとても耳がいいんです。小声であっても、よく聞こえました。それに、ホロウードは我が国よりも壁が薄いようでしたからね。以前にお伺いした際も、隣の部屋での会話が、すぐそばで聞いているのかと思うほどに明瞭に聞き取れましたよ。大嫌いな妹姫を野蛮な獣の国に追い払えて、随分とご満悦でしたよね」

 顔を真っ赤にしてわなわなと震えているヴァルラムを威圧するように見下ろして、カミルは更に顔を近づける。
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