【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 カミルの言葉に、サラハはその通りだと言わんばかりの笑みを浮かべた。

「えぇ。ですがルフィナ様はアルゥの香りが苦手ということでしたら、これからは一層検品に気をつけますわ。うっかりお部屋に花びらが舞い込んだりしたら、大変ですものね。これまでもそうしたことがあったかもしれませんし」

 気遣うような発言だが、何かの拍子にルフィナの部屋に花びらが紛れ込んだのだと言いたいのだろう。微かな香りですら吐き気を催すルフィナが封筒にくっついた花びらに気づかないはずはないのだが、サラハに疑いの目を向けるためにわざと封筒に花びらを仕込んだと言いたいのだろう。
 自らの無実を証明できたと思ったのか、サラハは晴れやかな表情で微笑むとカミルを見た。

「わたくしは、このアルデイルを心から愛しておりますもの。反逆だなんて恐ろしいこと、考えたこともございませんわ。カミル様、そちらの手紙はどこに宛てて書かれたものですの? 手紙に関連する方が一番怪しいのでは?」

「白々しいな。あくまで認める気はないということか」

 サラハの言葉にかぶせるように言って、カミルはため息をつく。疲れたように一度目を閉じ、再び目を開けた時には、彼はこれまでにないほどに冷たい表情をしていた。

「素直に認めていれば、良かったものを」

 低くつぶやいたあと、カミルはサラハをまっすぐに見つめた。その視線の鋭さに彼女の顔から笑顔が消える。

「その手紙には、ひとつ特徴的なことがあってな。何故かインクからもアルゥの香りがするんだ。アルゥの香りをつけたインクなど、一般には出回っていない。それを使っているのは――おまえしかいないよな、サラハ」
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