【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
「嘘……、リリベルの花……!」
 小さなガラスケースの中に置かれた植木鉢に、リリベルの白い花が咲いていた。
 信じられない気持ちで何度も目を擦るが、見間違いではない。懐かしい大好きな花を目にして、ルフィナの目に涙が浮かぶ。
「驚いた?」
 悪戯っぽく笑ったカミルが、ルフィナの顔をのぞき込んだ。何度も大きくうなずいた拍子に、涙が頬を滑り落ちていった。
「……まさか、アルデイルでリリベルの花を見ることができるなんて」
「植物の研究をしている学者がいてね、種を持っていたから譲ってもらったんだ。ホロウードに比べてアルデイルは暑いからうまく育つか心配だったけど、なんとかここまで育った」
 庭師や種を持っていた学者のアドバイスを受けながら、カミルがずっと世話をしていたのだという。
「ありがとうございます。とっても嬉しいし、幸せです」
「花束にできるくらいもっとたくさんの花を咲かせたかったんだけど、それは無理だった」
 そう言って、少し残念そうにカミルがため息をついた。
 やはり環境が違いすぎるためか、アルデイルで普通に花を咲かせるのは難しかったそうだ。外気を遮断する特別なガラスケースの中でしか、うまく育たないらしい。ここにあるのは、かろうじて一株だけ咲かせることができたものなのだそうだ。それでもルフィナにとっては、嬉しくてたまらない。
「カミル様がこうしてリリベルの花を私に見せてくださったことが、本当に嬉しいんです。ありがとうございます」
「喜んでもらえてよかった。こんなにも環境の違う場所でも一生懸命に咲くリリベルの花は、本当に『折れない心』の花言葉に相応しいし、ルフィナにぴったりの花だ」
 うしろからルフィナを抱きしめたカミルが、頬に残る涙の跡に口づけて笑った。
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