【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 ベッドの上ではルフィナがすでにぐっすりと眠っていて、そのあどけなくも見える寝顔にまた少しむらむらとするのを深呼吸してやり過ごす。
 起こさないようにとそっと隣に身体を滑り込ませたカミルは、ルフィナが何も身に纏っていないことに気づいてため息をついた。

「……服は着ておいてって言ったのに。きみはどこまで俺の理性を試そうとするつもりなんだ」

 つぶやきながら、カミルは彼女に着せるための寝衣を手に取った。もちろんあの薄く妖艶な下着ではなく、生地のしっかりとした厚手のものだ。

 なるべく見ないように、触れないようにと念じながら寝衣を着せるだけで疲れてしまった。だが、朝起きて彼女が服を着ていなかったら、今度こそ寝ぼけて襲ってしまうかもしれない。

「おやすみ、ルフィナ」

 服を着せても目覚めることのなかったルフィナは、随分と深い眠りの中にいるようだ。慣れない環境に移動してきたばかりだし、今日は結婚式ということで大勢の目にも晒されたので疲れもあったのだろう。

 いつかこの華奢な身体を暴く日は来るのだろうかと考えつつ、すぐそばで眠るルフィナの横顔を見つめる。
 跡継ぎを産まねばならないという使命ではなく、ルフィナ自身がカミルを欲しがってくれる日が来たならその時は――。
 来るかも分からない未来を夢見て、カミルはため息をつきつつ目を閉じた。
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