【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜

リリベルの花

 食事を終えたあと、カミルに手を引かれて王都を見て回る。

 アルデイルは煉瓦造りの建物が多く、街並みは色鮮やかだ。白と黒で統一されていたホロウードの街並みも整然としていて美しかったけれど、ルフィナは賑やかなアルデイルの雰囲気の方が好きだなと思った。

「あれ、カミル様だ!」

「花嫁様も一緒!」

「うちの店にも寄って行ってよ、カミル様」

 少し街を歩くだけで、カミルは色々な人に声をかけられる。彼が国民に慕われていることがよく分かって微笑ましいし、同時にルフィナにも皆が笑顔で声をかけてくれるのが嬉しい。しかも彼らは皆、ふわふわの耳や尻尾がついているのだ。特に小さな子供の愛らしさといったら格別で、ルフィナは思わず零れる笑みを堪えきれずにいた。

 アルデイルに来てからは、誰もがルフィナに笑顔を向けてくれる。ホロウードではほとんど人前に出ることはなかったし、王宮内でもひっそりと息を潜めて暮らしていたから、気兼ねなく外を出歩けるこの環境が楽しくて仕方がない。
 

「今日は、ルフィナと初めてのデートなんだ。だから邪魔しないでくれ」

 そんなことをカミルが言うと、周囲を取り囲んでいた国民たちはくすくすと笑いながらうなずいた。

「そりゃあ邪魔しちゃ悪いね。カミル様、花嫁様、楽しんで」

「花嫁様がアルデイルを気に入ってくれますように」

「カミル様、しっかりね! デートの時にはお花を贈るのがいいのよ。最後は夕日の綺麗な場所でキスをするの!」

 小さな子供にまでアドバイスをされるのを見て、ルフィナは思わず肩を震わせてしまう。
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