【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 顔を赤くしていることには触れず、カミルはルフィナの手を引いて走り出す。頬に当たる風が熱を冷ましてくれたらいいなと思いながら、ルフィナは繋がれた手と大きな背中を見つめた。


 カミルが連れて行ってくれたのは、高台にある展望台だった。ちょうどアルデイル城の目の前にあり、城と城下の街並みが見渡せる。真っ青な海も見ることができて、まるで絵画のような光景にルフィナは目を見張った。

「すごく景色がいいだろう」

「えぇ。海も街並みも城も……すごく綺麗」

 ほうっとため息をついたルフィナの肩を、カミルがそっと抱き寄せた。思わず見上げると、彼は優しい笑みを浮かべていた。

「俺の大切なものが、ここにある。この美しい景色を、明るく優しい国民を、俺は守っていかなきゃいけないんだ」

 一度言葉を切ると、カミルはルフィナをじっと見つめた。

「そして、もうひとつ大切なものができた。それはきみだよ、ルフィナ」

「カミル様」

「政略結婚ではあるけれど、俺はきみを心から大切にしたいと思ってる。だからきみにもアルデイルを、そして――俺のことも、好きになってもらえたら嬉しい」

 きっとカミルは、彼が大切に守るべきものの存在と己の覚悟を、ルフィナに見せてくれたのだろう。彼の妻となったルフィナが、それを支えていくのは当然だ。

「もちろんです、カミル様。ずっとおそばで、あなたを支えさせてくださいね!」

「……うん、今はそれでいい。ありがとう、ルフィナ」

 両手を握りしめて気合いを込めて返事をすれば、カミルは笑ってくしゃりとルフィナの頭を撫でてくれた。
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