【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 お茶を出して自分は寝ようとベッドに向かおうとしたルフィナの手を、カミルがそっと掴んだ。握られた手のぬくもりに、ルフィナはうるさくなった鼓動を落ち着かせるように小さく息を吐いた。

「どうかされましたか?」

「寝る前だが、今夜は特別にいいものを食べないか?」

 そう言って小さく笑ったカミルが、ポケットから手のひらに乗るほどの大きさの金色の缶を取り出した。

「それは?」

「疲れが溜まった時に食べる、とっておきの菓子だ」

 くすくすと笑いながらカミルが缶を開けると、中には丸いチョコレートが二つ入っていた。

「ほら」

 一つ摘まみ上げたカミルが、ルフィナの口の前にチョコレートを持ってくる。甘い匂いに誘われて思わず口を開けると、ころりと口の中に転がり込んできた。口内の熱ですぐに溶け始めたチョコレートの中には、蜜漬けの果実が入っていた。濃厚な甘さに思わず頬が緩む。

「美味しいです」

「だろう? ほら、もう一つ」

「ん、でもそうしたらカミル様の分が……」

「美味しそうに食べるルフィナの顔を見られたから、いい」

 そんな甘いことを言って差し出され、ルフィナは熱を持った頬を自覚しながらもおずおずとまた口を開けた。手ずから食べさせてもらうという行為は、何だかとても親密な感じがして気恥ずかしい。しかも、カミルの指先がなぞるようにルフィナの唇に触れるから、思わずチョコレートを飲み込んでしまいそうになる。

「俺の分は、これで充分だ」

 囁いたカミルが、ルフィナの唇を撫でた指先を口に含んだ。体温で溶けたチョコレートが微かに唇についており、彼がそれを指で拭き取ったのだろう。
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