【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
「……っ、あの、ご馳走様でした。とても美味しかったです」

 急に流れた親密な空気に耐えかねて、ルフィナは立ち上がると寝支度のために浴室へと逃げ込んだ。
 あの親密さならそのままの流れで抱いてもらえたかもしれない。貴重な機会を逃してしまったということに気づいたのは、就寝の挨拶をしてベッドに入ってからだった。

 ◇◆◇
 
 サラハとの閨に関する勉強会は続いている。だけど、ルフィナはサラハと約束した時間が近づくと心臓の鼓動がいつもより速くなるようになっていた。恐らくそれは、緊張から来るものだ。サラハがカミルとどんな時間を過ごしているのかと考えるだけで、胸の奥が苦しくなる。
 再び抱きたいと思ってもらえないルフィナが悪いのだから、もっとカミルを虜にできるような手技を学ばねばならないと思ってサラハの訪問を受けているが、彼女の口からカミルのことを聞くたびに、笑えなくなっている自分がいる。
 カミルといる時は笑えるのに、一人になると彼は今頃サラハと一緒なのだろうかと、そんなことばかり考えてしまう。
 

「ルフィナ様は、殿下の尻尾にお手を触れたことがございますか?」

 サラハに問われて、ルフィナは黙って首を横に振った。最初に会った時からずっと、いつか触れてみたいと思っているけれど、その機会はまだない。耳は何度か撫でさせてもらったが、お尻の上という場所には軽々しく触れられるはずもない。
 ルフィナの反応を見て、サラハはうなずいた。艶やかな唇が少し笑みの形をとったような気がする。

「そうですか。獣人にとって尻尾は、とても敏感な場所ですからね。心を許した相手にしか触れさせないものなのです」
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