【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜

リリベルの花と、アルゥの実(カミル視点)

 いい雰囲気になっていたと思ったのに、突然拒絶の声をあげて逃げるように四阿を出て行ったルフィナを見送り、カミルは深いため息をついた。

「……ちょっと、がっつきすぎたか」

 ぐしゃぐしゃと髪を掻きむしって、カミルは低く唸る。指先に何か触れたと思ったら、髪に小さな白い花びらが引っかかっていた。それは、アルゥの花びらだ。果実に紛れてくっついてきたものが、何かの拍子に絡まったのだろう。指先で摘まんだ花びらをぽいと投げ捨てて、カミルは再びため息をついて顔を覆う。

 久しぶりに味わったルフィナの唇は甘くて、歯止めが利かなかった。キスは受け入れてくれていたように思うのだが、それ以上の触れ合いがだめだったのだろうか。体調がすぐれないと言ったのは逃げ出すための口実だろうが、表情が硬かったのが気になる。あとでちゃんと謝罪しなければならないだろう。

「やっぱり外でこんなことは……だめだったな。誰もいないとはいえ、落ち着かないよな」

 外なら人目を気にして理性を保てるだろうと考えて、四阿で新婚夫婦らしい触れ合いをできればと思ったのだが、彼女には負担だったのかもしれない。だが、密室だときっとカミルの理性がもたない。夜だって、必要もない書類を持ち込んで仕事をしているふりを装って、ルフィナが先に寝るのを待っているくらいなのだ。起きている彼女とベッドの上で向かい合えば、襲わない自信などない。

 先程少しだけ触れた胸の柔らかさを思い出して、カミルは思わず手を握りしめる。
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