【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 リリベルの花を知る者は、アルデイルにはほとんどいない。ホロウードでも雑草に近い扱いをされているそうだが、ルフィナの好きな花ならそのデザインで指輪を贈りたい。いつか実物を見られたらいいのだがと思いながら、カミルは立ち上がった。

 テーブルの上には飲みかけのお茶と、封の開いていないチョコレートの箱。ルフィナと食べようと思っていたのに、すっかり忘れてしまっていた。

 先日、彼女にチョコレートを食べさせた時の記憶は、今もなお甘い思い出としてカミルの心の中に残っている。
 美味しいと笑った顔や指先で触れた唇の柔らかさ、微かに潤んでカミルを見つめたピンク色の瞳が、忘れられない。部屋で二人きりなら、またああやってカミルの手からチョコレートを食べてくれるだろうか。

 カミルは熱いため息を落とすと、箱を手に取って四阿を出た。
 
 ◇

 工房に寄って指輪の相談をしたあと、カミルはルフィナを訪ねようと部屋に向かっていた。
 外で親密な触れ合いをしたことを謝罪し、許してもらえたらまた一緒にチョコレートが食べたい。

 ルフィナが何やら匂いを気にしているようだったので、念のために着替えてシャワーまで浴びてきた。

 廊下を歩いていると、前方から見知った女性がやってくるのが見えた。

「こんにちは、カミル殿下。お出かけですか?」

 笑顔で近づいてきたのは、兎獣人のサラハだった。父親が宰相職に就いていることから、彼女もよく城に顔を出す。ついでにカミルの執務室に来ることも多く、昼前にも彼女とは会ったばかりだ。
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