【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 年が近いこともあってカミルとは昔から付き合いがあるし、過去にはカミルの結婚相手として名前が挙がったこともあった。可憐な見た目で城で働く男たちの間でも人気の高い彼女だが、カミルはサラハが少し苦手だった。

 大人しく儚げに見えるのだが妙に距離感が近いし、カミルに向ける視線はじっとりとした熱をはらんでいて、何だか食われそうな気がするのだ。

「あぁ、うん。ちょっとな」

 あまり長話はしたくないと言葉を濁すが、サラハは微笑みながら更に距離を詰めてきた。

「ホロウードからいらした花嫁様の……ルフィナ様、でしたっけ。先程ちょっとお見かけしたのですけれど、顔色が悪く見えたので心配ですわ」

「え? ルフィナが?」

 逃げ出す口実として体調がすぐれないと言ったのではなかったのだろうか。本当に体調が悪かったのなら、もっと酷いことをしてしまったとカミルは内心焦る。

「えぇ、随分とお辛そうなご様子で。やはり慣れない環境に移ってこられて、肉体的にも精神的にもお疲れなのかもしれませんね。ホロウードとアルデイルは、気候も生活習慣も、何もかもが違いますもの」

 サラハの言葉に、カミルもうなずいた。いつも笑顔で元気そうに振舞っているルフィナだが、慣れない異国での生活で気を張っていることは間違いない。そろそろ疲れも出る頃だろう。

 もっと大切にしなければ、やはり彼女との関係を進めるのはまだ先だなと考えつつ、カミルはルフィナのもとへ急ごうと決める。

「殿下、もしよろしければこちらをルフィナ様に。アルゥの実は冷やして食べれば喉ごしも良いですし、栄養価も高いですからお疲れのルフィナ様にもよろしいかと」
< 94 / 166 >

この作品をシェア

pagetop