【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 きっと最初から、手の届く人ではなかったのだ。政略結婚で、たまたま縁があっただけの人。愛されたいと望むなんて、無理だったのだ――。

「……だめね、後ろ向き思考は禁止だわ」

 大きなため息をついて、ルフィナはベッドから起き上がると気合いを入れるように両頬を手でぱしんと強く叩いた。
 じんと痛んだ頬が、頭の中を覆い尽くそうとしていた後ろ向きな考えを追い払っていく。

「今はまだ、私がカミル様の妻だもの。サラハには渡さないわ。サラハよりも私の方がいいって言ってもらえるように、頑張らないと」

 閨の担当としてあらゆる手技に長けているであろう彼女に勝つのは難しいかもしれない。だけど、このまま黙って奪われるのを見ているだけなんてできないし、身を引くつもりだってない。

「そうと決まれば、まずは準備ね。カミル様の好みをあまり把握できていないことが痛いけれど、やっぱりここは清楚かつ大胆に、かしら。下着を用意しなくちゃ」

 つぶやいて、ルフィナは立ち上がった。

 ◇

 侍女のイライーダの手も借りて、ルフィナは念入りに全身を清めた。サラハがアルゥの香りでカミルを誘惑するならば、こちらは清潔感のある石鹸の香りで勝負だ。サラハのような妖艶さはルフィナにないので、清楚さを前面に押し出すことにする。

 身支度を手伝ってもらいながら、ルフィナはイライーダにサラハのことを話した。やはり無理を言ってでも閨教育の場に同席していれば良かったと悔やみつつ、彼女はサラハにもカミルにも酷く怒ってくれた。
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