凄腕レーサーは中身も最上級〜夢見る乙女を眠らせない〜
「お似合いのご夫婦ですね。お礼と言ったらなんですが…これからお食事でもどうですか? あ、でももう遅いかな…」
と男性からお誘いを受ける。
お似合いの夫婦…か…。
そう見えたんだろうか。
指輪も付けてないのに。
「いや、お礼なんて…」
琴がやんわり断りを入れる。
「でも何かお礼をさせて欲しいです。こんな場所で日本人同士会えたのも何かの縁でしょうし。妻がこうして無事だったのも助けていただいたおかげですから」
琴は俺を少し困惑気味に見上げる。
「ありがとうございます。僕たちこれから予定がありますので、本当にお気持ちだけで」
「そうですか…。ならこれを。日本に帰国した際にでもお礼させて下さい」
そう言って少し残念そうにしながら、スマートに名刺を渡された。
"神楽コーポレーション 社長 神楽 丈慈"
これって大手ゼネコンの?
確か俺の都内にあるマンションもここが建ててた。
神楽コーポレーションはトップに立つ大手ゼネコンの会社。
社長って…
こんなに若いのに凄いな。
それにしても偶然だな。
同じ都内とか。
「それじゃ機会があれば」
とりあえずそう言っておく。
これは社交辞令みたいなもんだ。