新選組〈我武者羅物語〉
「巡回お疲れ様…」

彼は永倉新八…新選組、二番隊隊長で
この新撰組屈指の剣豪だ

「新八くん!」

花音は嬉しそうに新八に駆け寄る

新八の前でピタッと止まり、キラキラとした表情で新八を見つめる

「新八くん…」

瞳を輝かせて新八をジッと見る

「なんだよ…」

新八は花音を見て優しく微笑む

花音も一緒にニカッと笑う

「新八くんに会えたのが嬉しくて…」

「今朝も会っただろ?」

「今朝は今朝だよ!新八くんの顔が見れて本当に嬉しい!」

花音は幸せを噛み締める様に笑う

「そうかい…」

新八も少し呆れた声で優しく笑う

時刻は既に夕方…

「腹減ったな、飯行こうぜ!奢ってやるよ」

新八は屯所の外を親指で差し、トコトコと歩き出す

「ああ、待って!」

花音も後を着いていく

二人は京の町をゆっくりと歩く

「いつもありがとね!新八くん!」

花音は横を歩く新八に優しく微笑む

「何言ってんだよ今更、俺とお前の仲だろ」

「ふふっ、新八くんは本当に優しいね」

「そうか?」

花音は微笑みながら地面を見つめて歩く

「いつも私を気にかけてくれる…」

「私だけじゃない、局長や土方さん…新選組のみんなの事をよく考えてくれてる」

新八は花音の方をチラッと見た後、夕焼け空をそっと優しく見つめた

「局長なんて呼んでるけど、俺はあの人の事を対等な仲間だと思っているし」

「土方さんも、見た目はちょっと怖いが…
いや、めちゃくちゃ怖いが」

「すごく尊敬してる」

「俺は…新選組が好きなんだよ」

空を見つめていた優しい顔が歯をキリッと出した凛々しい笑顔に変わった

「新八くん…」

花音は新八の横顔を見つめる

目をウルウル輝かせて、頬を赤くした

「どうした?」

「いや…今、新八くんが…」

「え?」

「んーんっ…、なんでもない!」

花音は首を横に振る

「そうか…あっ!着いたぞ!」


       


「じぃさん!さーもん!」

「もう、食べ過ぎだよ!新八くん」

二人は行きつけの寿司屋に来ていた

「相変わらず、にいちゃんは物好きだなぁ」

店主がサーモン寿司を握る…

「サーモンなんてシャレたもんを…」

「うまいだろ…」

新八はサーモンを50貫ほど平らげた

「新八くん、本当にお寿司好きだよね?」

「お前だって好きだろ?」

「うん、試衛館時代からよく食べたよね!新八くんと一緒に」

「懐かしいなぁ…あの頃は金も無くてあんまり食えなかったけどな」

2人はしんみりとした顔になる

「それが今じゃ、こんなにいっぱい食べれる様になっちゃったもんね」

「新選組の給料も意外と良いからなぁ」

笑いながら、温かいお茶を飲む

「もう!意外とってなに!町の治安を命がけで守ってるんだから当然だよ」

「はいはい、そうですね」

新八は花音の言葉を軽くあしらう

「じぃさん!お勘定!」

はいよ!と精算した店主はお代を請求する

新八はお代を確認する

「あれ、じぃさん!お代、間違ってるよ!」

食べた寿司の値段よりもお代が少し少なかったのだ

「おまけだ…」

「は?」

「嬢ちゃん!あんたの言う通りだよ…うちの孫娘もな、新撰組に助けられたんだよ…」

店主は花音の目を見る

え?と花音は店主に尋ねる

「人斬りに襲われたところを助けられたんだ、その時、青色の羽織を着たお侍さんが助けてくれたってな…」

「本当に、ありがとう…」

店主は急に畏まった顔で…

「これからもどうかこの町をお守りください」

「いずれこの町も慌ただしくなる、この先きっと戦乱の時代に巻き込まれる…どうか」

店主は深々と頭を下げる

二人は少し戸惑ったあと、お互い顔を見合わせ真剣な顔つきになる

二人は頭を下げる店主を見て…

「「はい!」」と、口を揃えて言った

誠の文字を…心に浮かべて
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