御曹司様の一目惚れ人生ゲーム〜私はただ愛されたかっただけ〜花村三姉妹   葉子と仁の物語
訳がわからず九条さんを見上げ、ハッと息を呑んだ。


あっ、まただ……。


私を見下ろす彼の瞳は、獲物を捕らえる鋭いタカのよう。その奥に妖艶な光を放っている。まるで魔法にかかっているみたいで、抵抗できない。彼の瞳に吸い寄せられる。


再び警笛音が私の頭に鳴り響く。
『この人はキケン、また傷つく』


「おい、おまえ。一体どういうつもりだ? なぜ俺をそこまで避けるんだよ?」


彼の地に這うような声と乱暴な言葉遣いに、一瞬で現実に引き戻される。


えっ、えーー、どなたですか?
これがこの人の素の状態?
今まで仮面を被っていたの?
世の中の女性たちはみんなこいつに騙されてるよ。


とりあえず自分を落ち着かせ、仕事のように冷静に応対した。


「私が誰と食事に行くか行かないか、誰と付き合うか付き合わないかは、あなたに関係ありません」

「おまえは俺のことを何も知らないし、知ろうともしない。」

「……」


そりゃそうだ、あんたと関わりたくないからよ。


先程からの空腹がマックスな上、彼の態度でさらにどっと疲れが倍増。牛丼を食べ損ねるかもしれないと思うと、沸々と怒りが込み上げてきた。




彼と私の距離は、まるで恋人がキスをする時のようにとても近い。気が立っている私は彼の胸元に両手を置き、思いっきり突き放した。


フン、これでちょうどいい距離が保てる。


「とんだ似非(えせ)王子だわね。これがあんたの正体?」


思わず小馬鹿にして笑ってしまった。


「ああ、そうだよ。これが素のおれだよ。おまえ、俺と同じ匂いがするな……」

「あんたこそ、あたしのこと何も知らないくせに。一緒にしないでよね! あたしはあんたみたいなボンクラボンボン御曹司が大嫌いなのよ!」


ああ、やってしまった。あまりにも腹が立ったから、ついこっちも素になっちゃったよ。こいつに関わってはダメなのに。それに余計なことも言ってしまった。最後の言葉は言うべきではなかったよね。でも、でも……。
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