今夜、上司と不倫します  不倫したら一億円もらえるって本当ですか!?
「こんな高いもの無理です、買えません」
「せめてもの詫びとして受け取ってくれ。君もそのままでは嫌だろう」
 亜都は仕方なく受け取り、脱衣所で着替えてから部屋に戻った。

 すでに従業員はおらず、怜也が冷めた紅茶を飲んでいた。
 彼は亜都を見て頬を緩める。

「似合ってる。かわいいな」
「ありがとうございます」
 亜都は怜也に促され、彼の向かいに座った。

「なんて言って騙された? 余命宣告で同情しただけではないだろう?」
「断れば会社を首にすると言われました。成功したら報酬は一億円、とも。それだけあれば実家の借金が返せるから……」

「一億か。君を手に入れるには高くはないが」
 亜都は耳を疑い、首をかしげた。
 この発言はまるで自分を欲しているかのようだ。

「なぜ君がターゲットになったか、だが……」
 そこまで言って、彼は言い淀む。

 なんだろう、と亜都は黙って続きを待つ。
 彼はなにかをこらえるように顔をしかめた。

「君は朝、車のウィンドウを鏡代わりにしていただろう?」
「はい」
 なんで知っているんだろう、と思いながら返事をする。
< 25 / 28 >

この作品をシェア

pagetop