今夜、上司と不倫します  不倫したら一億円もらえるって本当ですか!?
「俺はあの車に乗っていた」
「え?」
「だから、君の姿はちょくちょく見ていた」

 亜都の顔から血の気が引いた。
 誰も乗っていないと思っていたから鏡代わりにしていたのに。

「あの頃から君は面白かった。秘書として紹介されたとき、もうそれだけで笑いそうで、こらえるのに必死だった」
 初対面のしかめっつらはそれが原因だったなんて。

「おもしろい百面相が見られて楽しかったよ」
 怜也はくくっと笑う。しかめっつらの防波堤は脆かったようだ。
 変顔をしたつもりはないが、鼻毛が出てないかな、とか、確認するために変な顔になっていたときはあると思う。それらすべてを彼に見られていたなんて。
 恥ずかしくてかーっと顔に血が昇る。

「わ、忘れてください」
 小さくなって頼むと、
「無理だ、忘れるなんてもったいない。思い出して何度でも笑わせてもらう」
 思い出し笑いとは思えないほど、怜也は笑いこける。

「笑い上戸ってばらしますよ?」
「そしたら君は首だ」

「パワハラで訴えますっ!」
「証拠はないだろ?」
 また、怜也はくくっと笑う。
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