今夜、上司と不倫します  不倫したら一億円もらえるって本当ですか!?
 恭平がドアをノックし、部屋に入る。
 中には大きな木のデスクに向かう怜也がいた。冷たい眼差しに気がつき、亜都の緊張は強くなる一方だ。

「失礼します。新しく秘書室に配属になった琴峰亜都さんをお連れしました」
「琴峰亜都です。よろしくおねがいします」
 頭を下げると、怜也はしかめっつらで彼女を睨む。

「なんでこの時期に」
「人事に確認しますか?」
「いや、いい」

 がたっと席を立ち、怜也は亜都の前に立つ。
 背の高い彼に見下ろされ、亜都は思わず目を逸らした。

「秘書経験は」
「ないそうです」
 恭平が答える。

「それで務まるのか」
「会社員には異動がつきものですから」
 ごまかすように答える恭平に、亜都は萎縮して小さくなるばかりだ。
「……そうか」
 言い置いて、彼はデスクに戻る。

「琴峰さん、コーヒーを」
「はい」
 亜都は緊張しながらデスクに近付き、トレイのコーヒーをソーサーごと手にする。緊張で手が震えて食器がカタカタと鳴った。
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