あやめお嬢様はガンコ者
翌日。
俺はグローバルマーケティング部の部長をお引き受けしますと、正式に部長に伝えた。

数日後、社長室にあやめさんと共に呼ばれて、社長から直々に辞令を受け取る。

2か月後に正式に部署を立ち上げるのを目標に、早速準備に取り掛かることになった。

やるべき仕事が一気に増え、俺もあやめさんも忙しくなる。
だがあやめさんの送り迎えは、毎日欠かすことなく続けていた。

二人で話し合うことも多く、夜はそのままあやめさんのマンションで夕食をご馳走になりながら仕事の話をするのがお決まりになっていた。

毎晩、食事のあとにはテーブルに大量の資料を並べて話し合いをする。

「まずは各国の支社の組織図や人材のデータを揃えましょう。具体的にどんな戦略で医薬品を取り扱っていて、どういうルートで患者さんのもとに薬が届いているのかも、目に見える形で把握しておきたいです」
「そうね。その中で特に気になる国は、直接現地に赴いて視察をしたいです。医療が発達していない国の状況も、肌で感じてみなければ。医療受診の公平性や投薬治療の状況、それに医療格差についても」
「そうですね。医療格差は世界中で取り組むべき大きなテーマだと思います。途方もなく長い道のりですが、今俺達が出来ることから少しずつ始めていかなければ」
「ええ」

熱中し過ぎて、あやめさんのマンションを出るのが終電ギリギリになってしまうこともあった。
そんな日々の中、いつの間にか意識が薄れていったのだ。
あやめさんとのお見合いの話や、あやめさんが恋愛をせずにいずれは政略結婚をするつもりであること。
そして、あのカフェで見かけたライバル会社の不審な男性のことも……。
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