(二)この世界ごと愛したい
肉眼で城を捉えると、エゼルタ軍が既に入城している最中。
それを見たおーちゃんが驚く。
「ちょ、お嬢。入っとるやん。」
「そりゃあそうだよ。エゼルタからしたら自分の国の城だもん。」
「歩いただけで手に入るって話やったやん!?」
「まだ何にも始まってないから。」
そう焦ることはない。
既にこの軍とは別の軍が動き出したような気配も感じ取れている。空気の流れが明らかに変わった。
「総司令さん、今頃優雅にお茶でも飲んで移動の疲れを癒してるのかもね。」
「確かにえらい余裕そうな…のんびりした軍やな。」
「ここに現れるのは私一人だと思ってるだろうからね。気持ちは分からんでもないけど。」
「その先読みの目、ほんま凄いな。」
今日はおーちゃんがとても褒めてくれる。
嬉しい…けど。これから起こる出来事を考えると、両手を挙げて喜べない。
「先が見えるって、良いことばっかりじゃないよ。」
「…?」
「今回の戦はね、こうなる状況を私が作った。自分を囮にしてここに連れて来た二つの軍は、これから殺し合って、悲劇を生むの。」
「…お嬢は付け回されて誘拐されようとしててんから、そこは割り切らなしんどいで。」
それが出来れば、そうだね。
けど昔からこういうのは本当に苦手で、未だに慣れないと情けなくなる。
「因果応報。だけどこの悲劇の後、ちゃんと落とし前は付けようと思う。」
悲しい戦のその後に。
この責任を償うために、エゼルタに揺るぎない炎を宿しに行こうと思う。