(二)この世界ごと愛したい
「総司令様、魔女はまだ現れません。」
「そっかー。仕方ないね。もう一杯お茶もらえる?」
「は、はい。」
城への入城を果たした総司令さんは、私の予想通り本当にお茶を飲んでいた。
「城内の兵達も配置は大丈夫?」
「手筈通りです。」
「いつ来るかなー。」
「…魔女一人に、流石に大掛かり過ぎませんか?」
率いて来た軍に、さらにこの城の兵まで残さず使って配置した総司令に疑問を持つ隊士。
そんな隊士さんに総司令さんが説明する。
「シオンが五万の兵で逃したんだから、寧ろ今回は少ないし。あの魔女はアレンデールの姫で戦神だよ。僕はこれでも少ないと思ったんだけど、これ以上は流石に…ね。」
「…確かに。戦神の名声は知っています。総司令様と同じく不敗の者。恐ろしい限りです。」
「とは言っても綺麗な子らしいからね!出来れば無傷で連れ帰りたい!」
そんな勝手な考えを巡らせ、またお茶を啜る。
「ランちゃんの娘さんだし、綺麗なのは当然だろうけど。お手並はどうかな。」
薄く緩むその唇が、次の瞬間締まりを見せる。
「そ、総司令様!!!」
「慌ただしいね。魔女さん来たかな。」
「魔女ではありません!!!」
只事ではない様子に、総司令さんが湯呑を置く。
「ぐ、軍です…!軍が来ました!!!」
「あれ?アレンデールには目を光らせてたけど特に音沙汰なかったよ?セザール?」
「違い…ます!あの軍はっ…!!!」