(二)この世界ごと愛したい
私は、とても冷酷な人間なのかもしれない。
そんなことを思いながら、進軍して来た新たな兵を見るしかない。
「…お、嬢…。」
おーちゃんも信じられないと言わんばかりに驚く。
それはそうだろう。
「…軽蔑する?」
「そうやなくて…。これって、ほんまにお嬢が仕組んだことなん?」
「…そうだよ。だからカイには言いたくなかったの。こんな馬鹿げた悲しい戦の手助けをしたのが自分だって分かったら、カイ辛いかなって。」
こんな手を、打ててしまう私を。
軽蔑して、侮蔑して、嫌になってしまうんじゃないかなって思ったから。
「…こんなん、同士討ちやで。」
エゼルタの総司令さんの軍へ。
攻撃をしようと進軍しているのは、同じくエゼルタの軍。
…それも、国王軍だ。
「だから、総司令さんには勝ち目がない。」
「…いつから…どうやって仕組んだん?」
「いつだったかな。エゼルタから私に向けられる追手には二種類いてね。そこに気付いた時に、もしかしたら使えるかもなーくらいは考えてたかな。」
「二種類?」
総司令さんへ脅迫状を送り付けた後からかな。
「私を捕えるために殺気混じりに狙う人と、同じく捕らえたいけど殺気のない人。」
最初はどうしてか分からなかったけど、レンに聞いたあの言葉を思い出した時に、その理由が分かった。
“ゴウの至宝の輝きを絶やすな。”
そのエゼルタ王の言葉があったから、その二種類の追手は別の人間から放たれたのだと思った。
殺気のある方は総司令さんからの使者。
殺気のない方はエゼルタ王からの使者。
「二種類の追手を利用出来ると思ったのは、その追手が全く連携が取れてなくてね。お互いに秘密裏に動いてるんだって分かったから。」
「やから、カイを使って逆に利用したん?」
「大正解。カイにもエゼルタに渡す情報を二種類に分けてもらったの。総司令さんの方には私の位置情報と行動範囲だけ。王様の方には、そんなエゼルタ兵と私が戦った場所…に、嘘も足してね。」
「嘘?」