(二)この世界ごと愛したい
ぽんぽんと、私の頭を撫でるおーちゃん。
出会った頃とは全然違う態度に、私は驚いて固まってしまう。
「どう、したの?」
「…別に。俺は寛大やねん。」
「はい?」
「大丈夫や。俺はお嬢が思ってるより遥かにお嬢のこと好きやから、怖がらんでええ。ついでにカイもな。」
すっごい甘やかされてる気がする。
この甘さは、どこかレンが浮かぶほど甘い。
「…レンと何か喋った?」
「は!?」
「おーちゃん変。」
「失礼やな!?」
失礼はどっちだ。
でも、おーちゃんの言葉が嬉しかったのは事実だ。
だってこんなにも、心が軽くなった。
「おーちゃんは仕事に戻ってください。」
「何でやねん!?」
「後ろから来てるパルテノン軍、おーちゃんが率いてた方が箔が付くから。」
「俺まで上手く使う気か!?」
私を何だと思ってるんだ。
既にこんなことを犯してしまったと言うのに。
「使えるものは何でも使う。それで流れる血が一滴でも減るならね。」
「使うってハッキリ言うたな。」
「パルテノン軍は無傷で帰すって決めてるの。ここまで来て心配はいらないだろうけど、念のためにね。第一将の存在で綺麗に諦めさせた方がエゼルタのためにもなる。」
「…あーはいはい。行けばええんやろ。」
嫌々満載に、おーちゃんはパルテノン軍と合流するために馬を待たせた場所へ引き返す。
私はこの場に残り、この惨劇を見届ける。