(二)この世界ごと愛したい



「おーちゃんおーちゃん。」


「ん?」


「背もたれ変わる?」


「お前俺を背もたれや思てたんか。」



私ばっかり楽させて貰ってるので、変わろうかと気を回したつもりだった。


なので立ち上がりおーちゃんの背後に周り、ぎゅっと抱きしめる。




「可愛いの天才か。」


「え?背もたれになれてない?」


「なってへん…あ、嘘。なっとるからそのままでええよ。」


「どっちなのー。」



とりあえずそのままでと要望が入ったので。


私は背もたれ頑張ります。




「お酒とってー。」


「手の掛かる背もたれやな。」



不満を漏らしながらも取ってくれる優しいおーちゃん。






「楽しいー…。」


「そら良かったな。」


「外の世界はほんとに楽しいー…。」



お酒でのふわふわの浮遊感。


賑やかな周囲のにこにこの笑い声。


腕の中に閉じ込めたぬくぬくの体温。




「嬉しいー…。」


「これからも沢山こんなことで溢れる。そうなるように、俺も頑張るわ。」


「うんー…。」


「珍しく酔ったん?」



酔ってしまいましたよー。


昨日からほぼ何も食べずにここまで来て、空きっ腹に大量にお酒を流し込んでしまいましたものー。




「ちょっとふわふわするー。」


「寝るか?」


「寝なーい。まだ飲むー。」


「あかんあかん。酔い過ぎたら明日しんどなる…で。」



後ろから抱きついて、その肩にほっぺを乗せてもたれていた私と振り返ったおーちゃんの目が合う。


私の顔を見て、おーちゃんが固まる。





「なーに?」


「…いや、酔ってんなー思て。」


「まだのめる。」


「顔面溶けてるで。」



なんだその暴言は。


顔面が溶けるとはそんなに醜い顔と言うことか。





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