(二)この世界ごと愛したい
思わず顔を顰めると、おーちゃんは私とは正反対に可愛く笑う。
その顔が羨ましいわ。
「オウスケさん、そろそろお嬢さん寝てもらって向こうで飲みません?」
「…まだ飲むらしいで。」
「え?もう潰れてません?」
「煽ったんな。またムキになって飲み始めるやん。」
ムキになんてならないし。
私そんなに子供じゃないし。
でも、そうだよな。みんなおーちゃんと飲みたいよな。私が独り占めし過ぎたな。
「おーちゃんいってきてー。」
「は?」
パッとおーちゃんから離れて、私は覚束ない足で立ち上がる。
もう日も暮れて飛べないし。とりあえず適当にその辺で夜明けを待って朝一でパルテノンに戻りたい。今日やるはずだった作業を終わらせなくては。
「っん…?」
ふわりと私の身体を頭から大きな布が覆う。
「あんまその顔晒すな。襲われてもしらへんで。」
「だれも…おそわない。」
「ここが布団の上なら俺でも襲い倒してる。」
「…お、ちゃんは、みんなのとこいってあげて。」
誰も襲わずに早く行ってあげてください。
私はもう眠いので、本当にこのまま寝てしまおうと考えています。怖いこと聞いたので布団では寝ません。
「せっかくの楽しい宴やで。」
「でも…。」
「寝ながらでも近くにおって。そしたら俺も楽しい。」
「…は、い。」
寝ながらでもいい…なら。
「行くで。」
「だっこー。」
「…心頭滅却せなあかんな。」
打ち消したい煩悩があるらしいおーちゃんだが、すぐに私を布で包んだままお姫様だっこ。
「世界一の姫様やから、丁重に運ばなな。」
この揺れがまた何とも心地よく。
おーちゃんがみんなの元へ辿り着く前に、私は高速で眠りに落ちる。