(二)この世界ごと愛したい
そうですね。
絶対気付いてしまうと思います。
「シキの兄ちゃん相手に、ほんまにやってのけたんかー。」
「相手同じ国の国王軍やし、そら負けへんわな。」
「それを動かせるんも、動かそうと考えるんも、そもそもが頭可笑しいんやて。シキの兄ちゃんもそれは敵わんわ。」
戦の話も報告が終わり。
ここでおーちゃんは疑問があるらしい。
「…お嬢ヤハネ落とす言うてたけど、イヴ将軍とこんなに会っててええんかな。」
「さあなー。お嬢の考え読むん俺には無理。」
「ハルに天下をって、いずれはこの国も…ってことやんな?」
「そうなんちゃう?」
意外とケロッとしているカイ。
そしておーちゃんも声に出した割には、そこに大きな不安はなさそう。
「どう考えても、矛盾してるやんな?」
「確かにな。世界を本気で落とすつもりなんやったら、落とす相手にこんなに優しくせーへんわな。」
「…でも俺、お嬢に国欲しいから負けてって頼まれたらその戦全力で負けれる自信あるわ。」
「変な自信持つなや。どんな第一将や。」
全力で負けれるって。
確かにそんな将軍中々いないだろうな。
「逆に言えば、そう言う関係やないから…落とすのはヤハネにしたんかな。」
「仲良くないとこだけ落とすってことか?」
「でもそれやと天下は無理よな。」
「…考えるだけ無駄やって。お嬢にはもう、この世界は半透明やって言うてたやん。俺等には見えてへんモノが、お嬢には見えてんねん。」
それは本当にカイの言う通り。
私には、ハルを天下統一へ導く道筋が薄らと見えている。
こんなに考えて貰っていて申し訳ないが、見えているのは道筋だけ。手段方法は、まだ模索中です。
カイはイヴのせいで、とても今日は酒場を営業する気にはなれず。おーちゃんも何だかんだかなり疲労の色もあり、二人はそれぞれの家に帰ることになった。
そんな二人の判断は素晴らしくて。
翌日、朝からまたどっと疲れることになる。