(二)この世界ごと愛したい



アキトに治療を施す隊員の顔は暗い。




「けど、リンちゃんちょっとやりすぎっすよ!隊長に何かあったら…!」


「ごめんね。でもここから軍の拡大が必須なこの軍においてアキトの進化は不可欠だよ。」


「隊長は充分強いっす!!!」


「うん、私もそう思う。でも足りないものは足りない。だから約束する。」




アキトの前で、“約束”という言葉を使うことに、少し抵抗があったんだけど。


初日大いに喧嘩したし。








「私がこの城を出る頃には、アキトは私を越える。」




そこまでは、最低でも持って行きたい。





「…俺がお前を?」


「そう難しい話じゃないと思うよー。剣だけの私なんてたかが知れてるし。」


「お前はいいのかよ。追放されたとは言えアレンデールに家族もいるだろう。いずれ敵になるかもしれねえぞ?」


「本当にそうなんだよね。私もうアレンデールのみんなに会わせる顔ないよー。」




だけど、それでもいい。


今優先すべきはセザールの軍事力。立て直せるのもここから守り抜いていくのも、アキトを置いて他にはいないんだから。





「敵に塩を送っていいのかあ?」


「いいわけないじゃん。それでも、このままセザールが危うい状況に置かれたままなのを見過ごせないし。アレンデールだけが平和ならそれでいいなんて私は思ってない。」


「…お前は聖女かよ。」


「残念ながら聖女は柄じゃないらしいよー。」




以前るうにはっきり言われました。




< 104 / 1,120 >

この作品をシェア

pagetop