(二)この世界ごと愛したい
「こっち。」
「へ?」
グイッとシオンが私を後ろに引いて、イヴから遠ざけた。
「これは俺の話ですよね。」
「ち、違う!イヴのことは相手にしなくていいの!」
完全に私とイヴの間に割って入ったシオン。
お願いだから余計なことしないでくれ。
「小娘の部屋に入ること自体、あの頃のアレンデールでは罪だ。この娘はハルさんの物だ。それを手に入れようなどと思い上がるな。」
「ハルの物、ね…。じゃあ奪うだけだけど。」
「ハルさんからこの娘を奪い取る腹積もりか。ならば奪った後、ちゃんと殺してくれるのか。」
「……。」
シオンごめんねー。
イヴがめんどくさくて本当にごめんねー。
「その娘が生きている限りハルさんはお優しい心を痛め続ける。ならば殺して終わらぬ悲しみを断ち切る。」
「…なるほどな。」
なるほどとかやめて!?
「殺したことにして据え置くのは?」
「「……。」」
流石はシオンさん。
頭の回転がお早いことで。確かにね、イヴの理論で行くとそれは良いアイデアかもしれませんね。
…私は絶対嫌ですが。
「無理だ。忌々しいことに、ハルさんとこの小娘は互いに存在が認識出来る。」
「存在を認識?」
シオンが不思議そうにしているのを無視して、今度は私がイヴと距離を詰める。
「イヴー、その軽いお口閉じようかー。」
「…相変わらず秘め事の多い兄妹だ。ハルさんは悪くないがな。悪いのは全部お前だ。」
「私もう怒るよー?」
「お前がそうやってひた隠すのに、付き合わされるハルさんが不憫でならん。」