(二)この世界ごと愛したい
この場は燃え上がった殺気に包まれる。
太陽がすぐ側にあるかのような怒りの熱量の方へ、皆さんの視線は向く。
「…イヴ。」
血を這うようくらいの低い声で。
だけど、私にとっては大好きで仕方ない。心落ち着く音がずっと聞こえていた。
「は…ハ、ル…さん。」
服を届けて欲しいと頼んだだけなのに、自分で来てしまうのがまたハルらしい。
しかし、現場はまた不運にもビッグネームで溢れ返っている。
「俺のリンに手出して、まさか生きて国に帰れるなんて思ってねえよなあ?」
「っ!!!」
イヴはもう顔面蒼白。
この状況を仕組んだ身としては、ザマーミロと思っています。
そして、ハルは店外へ出る。
どうやらここで本当にイヴの首を落として帰るつもりらしい。大刀を既に手に握り締めている。
「りっ…き、さま…!!!」
「助けてほしい?助けてほしいよね?ハルに嫌われるの死ぬより嫌だよね?せっかくここまで積み上げて来たんだもんね?」
「ど、どうしろと…!?」
「私に、言うことあるんじゃない?」
イヴは速やかにその場に座り、私に向かって頭を下げる。
「もう何も喋らん!!!」
「それで?」
「反省している!!!すまなかった!!!」
「うん、他には?」
「お願いします助けてください!!!」
まったく、世話が焼ける。
初めから何も喋らなければ私だってこんな悪巧みしなかったのに。
「カイのためにここに来るのは構わないけど、迷惑は掛けちゃだめ。」
「はい。」
「私のことも好きに言ってくれていいけど、人前ではだめ。」
「はい。」
「それ以外はもういいよ。私はそんなイヴが嫌いじゃないからねー。」
「か、かたじけない。」
私はすぐに外へ出たハルを追う。
「ハルーっ!」
「リン下がってろ。俺は今最高に機嫌が悪い。」
「ごめんー。あれ私がバランス崩しちゃって、事故なの。私を支えようとしてくれただけだから、寧ろハルからもお礼言ってくれる?」
「…事故…で片付けられねえ。俺の気が済まねえ。」
「ごめんってば。私も気を付けるから、ね?」
ハルの機嫌の取り方なんて、この世で私が一番知っている。
私はハルの顔に手を添えて額同士を合わせる。
「怒らないで?仲直りしよ?」
「…可愛いっ!!!」
ハルなんてこんなもんだ。
チョロいんだ。
しかし、未だにどこかイヴを睨んでいるので。最後もう一押ししたいな。