(二)この世界ごと愛したい
「ハルさんすんません!!!」
「…事故って、簡単に割り切れると思うか!?」
イヴが真っ直ぐにハルに謝罪。
だが、本人を目の前に中々許せないらしいハル。
「ハルさんの大切なリン姫に手を付けるなど、儂には出来ません!!!」
私とハル以外の皆さんの頭の上に疑問符が浮かぶ。
「そうだよー。そんなこと天地がひっくり返ったってあり得ないよ。ね、イヴ兄様?」
さらにさらに疑問符が増える。
私とイヴは、ハルの前では互いに呼び合う名が変わる。リン姫とイヴ兄様。
私がイヴを兄様と呼ぶのにもちゃんと理由がある。
「ハルお洋服持って来てくれた?」
「あ?ああ。三日分くらい持って来た。洗って使えば何泊でも出来る。」
「あ、ハルはいい。服だけでいいの。」
肩を落とすハル。
そんなハルに、私は口から出まかせを最後の一押しとしてペラペラと喋る。
「ハルに会えなくて寂しいなってイヴ兄様に言ったら、ハルのお洋服と一緒に寝ると寂しくないよって教えてもらったのー。だから置いて帰ってください。」
「なんっだその嘘みたいに可愛い理由は!?!?」
…嘘ですものー。
とは言えず、私はニコニコとハルに笑顔を向ける。
「何枚でも持っとけ!!!」
「ありがとー。」
これを後ほどイヴに横流ししよう。
「…ところでリン。」
「うん?」
「…何でここにシオンが居るんだ。」
もう対処すべき事柄が多過ぎるんだ。
私の処理スピードが全然追い付けていない。
「あー…とりあえず、シオン剣返すね。」
「……。」
シオンの剣をちゃんと返したが無視。どいつもこいつも機嫌が悪い。
そんなシオンが、無言で私の唇を袖で拭う。
「…本当、俺をイラつかせるの得意だな。」
「後で目一杯謝るから。とりあえず今は穏便によろしく。」
「……。」
「あ、でも丁度良かった。シオンさ、ハルの相談に乗ってあげてよ。」
ナイスなタイミングだ。
ハルは何を言い出すと嫌そうな顔になってしまったが、同じくシオンも何故か嫌そう。
「ソルの第一将、どうするかシオンに決めてもらうのが一番良いと思うんだよね。」
「…討ち損じた奴の不始末か。」
「ああ!?」
ごめんね、ハル。
ここは私はシオンに賛同しちゃうよ。
「私はハルが深追いしても同じことだと思うんだよね。意味ない気がする。」
「この馬鹿にはもう頼みません。これからアキトが出る。それでも無理なら俺が出る。」
「アキトかー。でもトキがいるなら少し安心かな。」
「畳み掛けて休む間を与えない方が良い。」
「だねー。せっかくハルが頑張ったんだし、この機は利用した方がいいね。」