(二)この世界ごと愛したい
弱気なままって言われてもなー。
正直戦の方が楽だ。最悪力技で押せるんだもん。でも今回は、そうじゃない。
「ある程度策は練ったけどね。私はこういうの不慣れだから。」
「リン?」
「…ハルは、私がエゼルタのお姫様に負けないと思う?」
「はあ?」
だってだって。
やっぱり不安だよー。私女としては本当に終わってるんだ。教養もない。お淑やかでもない。社交の場にも出られなかったからその辺のツテもない。
「本当はもう少し先にしようと思ってたの!こんなに早く行くことになるなんて思わなかったの!もう少し経験積みたかったし修行したかったの!」
「…いらねえよ。」
「需要だけの話なら負けないんだけど。そうじゃないじゃん。私が下手打ったらハルにも国にも迷惑掛けるじゃん。」
「マジで珍しく弱気だな。」
「専門外だもん。戦の方が簡単。」
不安な私の目の前にハルがいるもので。私の口から本音がボロボロと溢れる。
「俺のリンは世界一の女だ。どの姫にも負けねえよ。」
「…他のこと言えないの?」
いつもいつも、似たようなことばかり。
来世で言うと決めているハルと、こんな時くらいもっと気の利いた台詞で励まして欲しい私。
「他?」
「…もういいよー。頑張りますー。」
とりあえずシオンは他に話したいことがありそうだし、カイとも今後の打ち合わせがしたい。
おーちゃんは珍しく静かにしている。
イヴはハルがこの場にいるので頬を赤らめて、ハルをチラチラ見ながら気持ちの悪い顔をしているから帰って欲しい。
「は…っる。」
ハルはいつ帰るのか聞こうと思ったら、先に動き出したハルが私をまた抱き締める。
「お前は俺の誇りだ。胸張って笑っとけ。」
「っ…!」
すぐに私を離したハルは、ただ嬉しそうに笑っていて。
「世界一の俺でも、そんなお前が相手じゃ勝ち目もねえよ。」
「…やっぱり好き。」
「当たり前だ。永遠に俺だけのリンだ。」