(二)この世界ごと愛したい
頭が固く口煩いハルの側近を、こんなにあっさり追い返してくれるなんて…!
「うう、イヴありがとー!私またこってり怒られるのかと思ったよー!」
「離れろ鬱陶しい!!!」
「切り替え早。」
側近が退席したので。
そのままの勢いで行けるかと思い優しいモードのイヴに飛び付くと、すぐに通常モードに戻る。
「リン!間違えた…小娘!!!」
「わざわざ言い直さなくていいじゃん。」
「貴様さっきはよくも…っ!」
さっきの私からのキスが気に入らなかったらしい。
「嬉しかった?」
「蚊に刺されたに等しいわ!!!」
「…また昆虫か。」
私の例え昆虫率高すぎる。
昆虫にも命はあるが。割と悲しい。
「それよりリン早く渡せ!!!」
「へ?」
「ハルさんの服!!!」
「お好きなだけどうぞー。」
三日分らしいからな。
本音を言うとさっきの口から出まかせの嘘を、実現させたいとも思って。一枚くらい欲しかったけど止める。
たぶん、会いたいが止まらなくなる。
「イヴ帰るの?」
「今追い掛ければハルさんに追いつける!!!」
素早く帰り支度を整えたイヴは、ハルを追い掛けたくて仕方ないらしい。
「…次会う時には、私が言った改善点は直しといてね。」
「喧しい!儂はもう行く!カイさんお邪魔しました!!!」
大好きなハルの元へ。
イヴは駆け出して行ってしまった。
「……ねむ。」
嵐が去れば眠くなってきた。
そんな私に気の利くカイがそっとコーヒーを差し出してくれる。
「あーやっと帰った。お嬢も大変やな。あんな怪物相手にして来たんか。」
「イヴの相手は苦じゃないよ。すんごい嫌われてるけど、私は嫌いじゃないし。」
「あんだけ言われて嫌いにならんって、お嬢は懐広いな。」
「ああ見えてハルはイヴのこと信頼してるから。ハルがそう思える人なら、私はどんな人でも好きだよ。」