(二)この世界ごと愛したい
もしもの話です。
カイの表情からして、たぶん引き受けてくれるんだろうからそんなことにはならないと思ってる。
「色々本当にごめんね。」
「…流す情報って?」
「エゼルタに行って王様とお話してから連絡する。こればっかりは本当に流れ読めないから。」
「了解。とりあえずこの話は引き受けたるけど、お嬢さっきのオウスケと白狼やけどな。」
カイは割と真剣に私に語り掛ける。
「別に二人共お嬢に嫌な思いさせたかったわけじゃないねん。ただの可愛え嫉妬やから。」
「…嫉妬?」
「自分にも構って欲しかったんよ。お嬢がちょっと優しくしたら二人ともすぐ許してくれるわ。」
「…嫌われた方が楽かもなってたまに思うの。こんなこと考えてる私を、想ったままにしておくのも申し訳ないし。許さなくて良いから、嫌われたい。」
食事を終えて、カイの話にちゃんと耳を傾けて。
私は私なりに思っていることを、正直に打ち明ける。
「俺昔好きやった子がおってんけど、他から出て来た男に掻っ攫われたんよ。」
「え?」
「当時は腹立ったけど。そのままソイツと結婚して子供産んでって、次会ったら文句の一つでも言おうって決めててん。」
「…言ったの?」
「いざ再会して見れば、見たことないくらい幸せそうに笑ってて。そんな顔見れただけで、怒りなんか忘れてしもたわ。」
そうなんだ。
そう言うものなのか。
「やから、あの二人もいつかちゃんと吹っ切れるし、思ってもないこと言うて守らんくても大丈夫や。」
「思ってもないこと?」
「ほんまは嫌われたいわけじゃないやろ。オウスケと白狼に限らず、ほんまはみんなと仲良くしたいだけなんちゃんと分かってんで。」
「…嫌われたく…ない、けど。」
それは私の我が儘で。
恋愛は一人としか出来ないし。その一人が居ないものだから、私はどうして良いのか分からないんだ。
「カイは好きじゃない人にキス出来る?」
「うん!?」
「今私に出来る?」
「喜んで!?」
出来るのか。
私もたぶん出来てしまう。そこに変な感情湧かないから。
「…何て言うんだろ。私もカイには出来るけど、おーちゃんとかシオンには出来ない…と思う。たぶんいっぱいいっぱいで…恥ずかしすぎて無理。」
「えー…赤くなるん止めて。可愛え。それにサラッと俺の扱い…。」
「その気持ちをさっきも伝えたつもりだったんだけど、二人共怒ってた…から。」
「うん。たぶんそれ伝わってへん。」