(二)この世界ごと愛したい
シャワーを浴びてアキトの部屋に戻る。
まだ部屋は真っ暗で、アキトは戻ってきていない。
月明かりが窓から差し込むだけの明るさの室内で、その光の側に寄る。
窓から空を見上げると、綺麗な夜空がそこにある。
「…綺麗だなー。」
本の続きをと、思って足早に戻ってきたけど。
こんな綺麗な月夜に気付けてよかった。
「リンちゃん…?」
「ん?ハナちゃんどうしたの?」
アキトの部屋を訪ねて来たハナちゃん。
「あ、明日のお洋服の準備したから先に渡しとこうと思って来たんだけど…。」
「いつもありがとう!私居候なのにごめんね!」
「それは全然…いいんだけど。」
どこかハナちゃんが、変な感じだ。
あれか!?明日サクに怪我させる宣言しちゃったのがまずかったのかな!?
「き、綺麗すぎて…言葉が出なくて…。」
「あーうん。今日の夜空は綺麗だね。サクと一緒に見てくる?」
「綺麗なのはリンちゃんだよ。でも、綺麗なはずなのに…リンちゃんが消えちゃいそうなくらい儚くて、ちょっと怖い。」
「私消えそうなの?」
初めて知りました。
そして私を儚いと言ったハナちゃんには、私がどう見えているのか気になった。
「ご、ごめん!失礼だよね!?」
「そんなことないけど怖い思いさせてごめん…?」
「お洋服置いとくねっ!」
「やっぱりハナちゃんは良いお嫁さんだねー。」
私がそう言って笑うと、逆にハナちゃんの笑顔が消える。
「私はリンちゃんみたいになりたいよ。そしたらサクくんの役に立てるかもしれないし…。」
「…ハナちゃんは、私を強いと思ってる?」
「それはそうだよ!アキトさんをあんなにボロボロに出来るんだもん!!」
「今日のアキトは万全じゃないからね。でも、私はやっぱりハナちゃんの方が強いと思う。」
そう。
私は実際強くなんかない。