(二)この世界ごと愛したい
伝わってない…のか。
カイが恋愛マスターに見えて私は前のめりで、ここぞとばかりに質問する。
「どう伝えたらいい?」
「お、お嬢まずその格好でカウンター乗り出すな?色々危ないで?」
「私は何で上手く伝えられないの?」
「…別に上手く伝えようとせんでも大丈夫や。今のそのまま伝えるだけで喜ぶやろうし。お嬢の身の保証は出来ひんけど。」
身の保証?危険なのか?
「それはお嬢がちゃんと異性として意識してるから生じる感情やから。狼共はそれだけでお嬢が餌に見えるんよ。」
「…異性…意識…。餌はやだな。」
「焦ることじゃないし。その時が来たらたぶんはっきり分かる。その意識の先に、恋がある。」
「…なるほど。」
恋愛マスターすごいな。
説得力がありすぎて、すんなり落とし込める。
「お嬢はほんまに可愛えな。」
「…カイはエゼルタのお姫様より私の方が可愛いと思いますか。」
「はっきり言うわ。絶対お嬢が圧倒的に可愛い。」
「会ったことあるの?」
「…チラッとな。相手にもならんレベルで大優勝やから安心してええと思う。そしてそれ、さっき白狼に聞いてたけどあの人拗らせてるから人前では答えてくれへんよ。二人きりの時なら答えてくれるはずや。」
す、すごくない!?
カイの域まで達するとシオンの心まで読めるの!?
「うん、そうしてみる!」
「あー俺はもう癒されすぎて今日の営業朝まででも頑張れそうやー。」
「お店!私も今日は出ようかな!」
「ほなワカ呼ぶし、お嬢まず上で着替えておいで。そんな格好してたら男みんな狼なるで。」
と言う話になりまして。
私は久々にお店に顔を出すことになり、いつもすぐ駆け付けてくれるワカさんに身なりを整えてもらった。
久々のツインテールだが、これにももう慣れた。
「おお、今日は嬢ちゃんいるじゃねえか!」
「久しぶりだなあ!」
「いつ見ても可愛すぎるっ!」
支度が終わる頃には、店内には数人お客様がいらっしゃっていた。
ワカさんはまたすぐに退店。
おーちゃんはまだ戻って来ていないらしい。