(二)この世界ごと愛したい



近距離で声を掛けるるう。


慣れした親しんだその声は、確かに私の耳に届くものの。私はまだまだ眠いんです。




「リン。」


「…や。」


「嫌じゃねえよ。起きねえなら俺はこのまま帰るぞ。」




…帰る?


誰が?これはるうの声?夢か?




「る…。」


「あーはいはい。」



すぐ側にある。


安心する方へ手を伸ばすと、当たり前のようにそこにいる。




「る…う?」


「ん?」



その首に腕を回すと、ゆっくりと抱き起こしてくれる。


ただ頭はまだ着いて行けない。




「…お、かえり。」


「ただいま。」



そのまま灯りのない部屋から私を抱えて、階段を下に降りて行くが。


突然の眩しさに私は光から目を逸らす。




「おいコラ。今引っ付くな。」


「…眩しい。」


「階段危ねえだろ。」



灯りが眩しいために、私はるうの胸元に顔を埋める。




「お嬢起きた!」


「声のトーン落とせよ。頗る機嫌悪いから。」


「あ、はい。」



るうに言われた通り、静かにしようと心掛けるおーちゃん。


しかし、そんなおーちゃんには悪いが。私はこの明るさにも嫌気が差している。早く暗い部屋でまだ寝たい。




「……。」


「あ、やべ。服着替えさせんの忘れた。てかお前、他所でそんな格好で寝るな。」


「……。」


「起きてんだろ、話聞け。」


「…聞いてる。」



いつもより全然低い私の声に、これはかなり機嫌が悪いとカイもおーちゃんも状況を把握。




「とりあえず上から羽織るもん持って来るわ。」



カイが気を利かせて、そう言って羽織を持って来てくれたので。


るうがそのままふわりと私に被せる。





「自分で座れ。」


「…いい。」


「今大人しく座るならコーヒー淹れてから帰ってやる。」


「…う。」




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