(二)この世界ごと愛したい
るうのコーヒーに心が揺れる。
せっかく会えたるうがすぐに帰ってしまうのも嫌で心が揺れる。
津波のような睡魔にどうにか抗い、私はちゃんとカウンターの前の椅子に座ることになりました。
「…ねむいー。」
「お前、他国の人様に迷惑掛けてどうすんだよ。」
「……。」
「寝るのは良いが心配掛けるくらい寝んのは止めとけ。起こす奴が不憫だ。」
そうは言われても、眠いものは眠いんだ。
今は特に。
生きているだけで体力を奪われて行く感覚がある。寝ていたいんだ。
「出来ねえなら連れて帰るぞ。」
「…やだ。」
「じゃあちゃんとやれ。」
渋々頷いた私の頭にぽんっと手を乗せて、るうが笑ってくれる。
「ちょっと待ってろ。」
「…ん。」
机に突っ伏しながらも、るうがコーヒーを作り始めたことは何となく分かった。
朝ではないけども。毎朝こうしてるうのコーヒーを待っていた頃が懐かしい。城を出た頃は、中々慣れなくて困ったものだったが。
…当たり前は、当たり前ではなかった。
そんなことに離れてから気付かされる日々だった。
「お嬢、大丈夫なん?」
「んー。」
「これは大丈夫って意味なん?」
「…まだ寝足りねえだけだ。ここまでなるほどお前は何してたんだよ。」
どうもすみませんね。
おーちゃんも心配掛けてごめんね。もう今すぐに寝たいと身体が言っているが、るうのコーヒーは次いつ飲めるか分からないので。
ここはもう少し頑張りたい。
「飲むならちゃんと目開けろ。」
るうがカップを目の前に置いたのは分かる。
なので眩しいから嫌だけど、どうにか身体と瞼を動かす。
「…んま。」
「はいはい。じゃあ俺戻るけど、お前マジでちゃんとしろよ。」
「…分かってる。」
帰ってしまうるうに寂しさは残るが、引き留める元気はない。
ただ、頭の片隅にある頼み事だけは伝えておきたい。
「るう。」
「あ?」
「…ママに貰ったドレス出しといてー。」
「あー了解。他にも何かあるか。」
「…今は無理ー。」