(二)この世界ごと愛したい
翌日。
私は宣言通りに目を覚ます。
目覚めてすぐに感じた喉の渇きに不快さを覚えつつも、私はどうにか身体を起こした。
るうが帰った後またすぐ眠った私を、カイかおーちゃんが上に運んでくれたらしく。きちんとベッドで目覚めた私は、またお礼を言わねばと寝起きで考えていた。
そしてまずはシャワーで身体を流すため、浴室へ向かい。身支度を整えてから下のお店に降りる。
「おはよー…。」
「お嬢っ!」
下には安定にカイとおーちゃんがいる。
目覚めた私に駆け寄ってくれる、優しいおーちゃんに癒される。
「ご心配お掛けしましたー。」
「ほんまに心配した。」
「よく寝ましたー。喉乾いたー。」
そんな言葉にすぐにお水をくれるカイ。
「生き返ったー。」
「大丈夫なん?ずっと寝てたで?」
「元気に寝ててごめん。おーちゃん今日はお稽古しませんかー?」
「え、病み上がり相手になんか嫌や。」
病んでません。
本当に寝てただけなんです。
「私はもう大丈夫だよー。今日からエゼルタ行くまでは基本的に動かないし。お稽古がダメならカイ、早く私のお願い叶えてー。」
「お願い?」
「お城の本読ませてくれるって言ったじゃん。」
「あ。」
おーちゃんに忘れられて。カイにまで忘れられてしまっていた。
薄々気付いてましたよ。一向に届かないんだもん。
「…お嬢これ食べとき。ちょっと行って来るわ。」
「カイ、朝からごめんねー。」
私のご飯を準備してすぐに本を収集しに向かおうとしてくれたカイに、ごめんと謝ると二人がぐるんと振り返り私を見る。
「一応もう夕方やねんけど。」
「あら、通りで西日だ。」
寝過ぎだとそれは心配されるわけだ。
カイは時間の感覚さえ失った私に不安を覚えつつも、本の手続きのためにこの場を離れた。
「るうは何しに来てたの?」
「ハルがここに来た口止めと、お嬢の金払いに?」
「あー理解した。公賓のお客様に角を立てたくなかったんだねー。」
「夜にわざわざ来なあかんほど忙しいねんな。」
「…じゃあ本格的に将軍のお仕事が始まったんだよ。」
「お嬢の従者辞めて将軍に?」
えー辞められるのは嫌だな。
城に居ないし、居ないくせに昨日みたいなお手間を掛けてしまいますけども。
「副業でいいから辞めないで欲しいなー。」
「お嬢のことめっちゃ詳しかった。」
「生まれてからずっと一緒だったしねー。ハルと三人で良く遊んだの。」
「幼馴染で従者で…将軍。群を抜いて他とはレベルがちゃうわ。」