(二)この世界ごと愛したい




「あ、いけない!私ついつい長話しちゃってごめんね!リンちゃん明日もお稽古で朝早いのに…!」


「ううん。楽しかったよ。」


「嬉しい!リンちゃんありがとう!じゃあまた明日、頑張ってねっ!」




こうして、おやすみを言い合って。


ハナちゃんはアキトの部屋から走り去る。








「うわあ!?」


「…ハナ、お前うるせえなあ。」


「あ、アキトさん!?」




部屋を出たハナちゃんは、アキトと遭遇。




「…まさか盗み聞きしてました?」


「盗み聞きも何もそこ俺の部屋だからな。」


「デリカシーないです。」


「だから俺の部屋な!?」




そんなことは関係ないと思ってるハナちゃんは、先程の私との会話を思い返し。


真剣にアキトを見据える。





「リンちゃんのこと、守ってあげてくださいね。」


「……。」


「誰よりも強いはずなのに、それが逆に私は心配です。自分から一人になろうとしてる気がして…怖いです。」


「…知ってる。」




私のことならば、アキトは全部見透かせる。






「んなこと、初めて会った時から全部知ってる。」




私が人を信じないことも。


全て一人で抱え込むことも。



アキトは全部分かってて、分かった上で。そんな私を信じてくれる人。





「リンが消えちまいそうなくらい弱いことも。それでも誰かのために戦い続けることも。」




だからこそ、私に戦は向かないとアキトは言った。





「危なっかしくて、そりゃ守らなきゃならねえよなあ。」


「っはい!お願いします!!」


「分かったからさっさとサクのとこでも行って仲良しこよししてろ。」


「なっ、仲良しこよしって何ですか!?」




子供扱いされ、プンプンと怒りながらハナちゃんはサクの元へ帰って行く。



アキトはここでようやく自室に戻ることが叶う。





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