(二)この世界ごと愛したい
「シオン将軍自身が、リンにとって危険だったら?」
「あの馬鹿はリンを危険には晒さねえよ。俺をならまだしもな。」
ハルは危険に晒しても、私は晒さない。
しかし今回は、私は自ら危険に飛び込もうとしていることをシオンは知っている。
「ただ、不純な狼には違いねえからな!?そこはお前何とかしろよ!?」
「あの人そんな風に見えねえけど。」
「甘え!お前は甘えんだ!巷では女嫌いで有名らしいが、そんなのがリン相手に適用されるわけがねえ!」
「…ま、何とかなるだろ。俺がいるし。」
るうはただ久々の私とのお出掛けに胸を弾ませるだけ。
その様子にハルは別の不安を覚える。
「お前は…あれだよな。リンとは終わったんだし、今更変な気起こすなよ。」
「今度は何の心配してんだよ。」
「手出すなよ。」
「……出さねえよ。」
「何の間だ!?今何を考えた!?」
「うるせえ。」
手は出さないとるうは本当に思っている。
しかし相手が私なもので、そんな考えにも自信が持てないのも事実だった。
「あら?」
そこへママが現れて、るうがドレスを準備しているのを発見。
「エゼルタにお呼ばれの服?」
「あーはい。リンが服の指定したんで。」
「まあ!気になる方でもいるのかしらっ!」
「いねえよ!!!」
すかさずハルが否定。
ママは私が選んだドレスを見て、また嬉しそうに笑う。
「リンがご招待を受けるなんて初めてね。」
「…そうですね。」
「今までも招待状は山程来ていたのに、リンの手には届かなかったから。喜ばしいことね。」
ママはここに来てようやく社交界デビューする私を、心から喜ぶ。
そして今までこの城に押し込められていた私が、ようやく輝かしい場所へ行くのだと感慨深い気持ちになっていた。
「ハルが届けてくれたのね。」
「…別に。今回はリンに必要らしいから、隠したら嫌われる。」
「ありがとう。」
「行き先はエゼルタ。あの王とシオンがいる。リンの身は大丈夫だろうからな。」