(二)この世界ごと愛したい



思えば、そりゃあ私の力ではない。


膨大な力とは確かに言えないが、それでも私自身の力だと過信していた。




『災い故の、悲痛の力か。』


「…そうかもね。」



幼少期、確かに私は荒れ狂っていたから。


その時に願った力なんだろう。




『天は二物を与えず。』


「…励ましてくれてるの?」


『……。』


「ちょっと元気出た。ありがとう。」



私は強引に涙を引っ込めて。


ただ前を向く。





「よし!頑張ろうっ!」


『加護を与えよう。』


「いらなーい。加護って私も出来るの?」


『可能だ。』


「やり方教えてー。」



しれっと神様直々の加護は断って、神様直々に加護伝授の方法を教えて貰った。


伝授するかどうかは、分からないけども。





「ありがとうー。」


『巫女の子を愛してやまぬ。』


「ママみたいに祈ってあげられなくてごめんねー。」


『構わぬ。』



神様は巫女の祈りを食い物にする。


私はずっとそう思ってた。





「…気が向いたらまた来るから、まだまだ色々教えてね。」



本当は、寂しかったりするのかな。


そんな神様は、私に黙って勝手に加護を付与してしまう。





『待っている。』


「うん。じゃあまたね。」



神様との対話。


加護が引っ付いて来てしまったが、私はそこにはもう何も言うまい。もうお好きにどうぞ。



己の弱さに打ちのめされても、無力を嘆いている時ではない。






『太陽を断ち切った後、ここで共に過ごそう。』




私を静かに見送った神様は、私には届かない声を静かに発して消える。






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