(二)この世界ごと愛したい
さらに、私がエゼルタへ向かった後の話。
この神殿に訪れたママ。
私から頼まれたことを実現するために、アレンデールからやって来ていた。
「懐かしい。」
そう呟いても、ママはもう神様と対話する台座には上がらない。
それは昔からのパパとの約束のため。
「…ら、ラン…か?」
「お久しぶりでございます。パルテノン国王様。」
ママは、ただ会いに来ただけ。
パルテノン王に。
ここに来れば会えると考えた。ママは顔を知っているその王を見て、にっこり笑みを向ける。
その王の傍には護衛が一人。
「え、お嬢のおかん?」
「オウスケ、アレンデールの王妃やぞ。礼儀正しくせんかい。」
それは、私も良く知る二人。
「あら、可愛らしい騎士様ね。娘がお世話になっております。」
「…どうも。」
ママに可愛いと言われても、文句の一つも言えない立場のおーちゃん。
「ラン、どないしたん?」
「パルテノンの王様に会わせて貰えないからって、リンが代わりにお礼を伝えて欲しいそうなの。」
「…はー…さよか。」
「ありがとうございます、カイセイ様。」
パルテノン国王、カイセイ。
普段は酒場の店主なんかしちゃって。情報なんて売り捌いちゃって。
変な喋り方で、お料理上手で、たまに邪を言う。この人が、パルテノンを統べる王。
「…ほんま、ええ娘やな。」
「それはもう。自慢の娘です。」
「ようあんだけ真っ直ぐ育てたな。お嬢の心境考えたら俺はたまにその父親に腹立ってしゃあないわ。」
「…人の感情とは、分からないものです。」