(二)この世界ごと愛したい



神殿にほぼ閉じ込められて、毎日毎日ここで祈りを捧げることしかしていなかったママ。


それを強引に外の世界へ連れ出したのは他でもないパパ。


そんなパパは、今度は私を城に閉じ込めた。




「望む形ではなかったやろうけど、お嬢が外に出られて良かったか?」


「…リンのことだけ考えればそうかもしれないけど。ハルとアルは寂しそうだから…どうかしら。」




ママは真剣に考えるがやはり私が居ない分、息子達のことを考えると一概に喜んでばかりもいられないと憂う。


特にハルの寂しさを、毎日毎日見ているから。




「長男にも少しは我慢覚えさせなな。」


「ふふ、そんなこと言ったらハルはリンのところに家出しちゃうわよ。」


「それは…困るな。今は。」



私のところにとなると。


ハルはカイの酒場にお引越ししてしまうから。それは困るとカイは苦笑い。




「…そちらの騎士様は?」


「うちの第一将や。先日そちらのお嬢さんにプロポーズして粉砕しとった。」


「おいコラ!?余計なこと言うなや!?」


「リンにプロポーズっ!?」



ぷんぷん怒るおーちゃんと、大興奮で喜ぶママ。




「お名前はっ?」


「お…オウスケ。」


「オウスケ様は見る目がおありです!リンはとっても可愛いですよねっ!」


「そら…まあ。」



嬉しそうなママに圧倒されるおーちゃん。


母がご迷惑お掛けしてすみません。




「でもリン、お断りしてしまったんですね。」


「……。」


「やっぱり他に良い方がいるのかしら。」


「…カイ、キレてええんかな。」



すぐにおーちゃんの頭を叩くカイ。




「お嬢はハルにしか心動かんねん。」


「…オウスケ様やルイやレン様が愛情を注いでくれるから、リンは益々綺麗になりました。」


「あ、あいっ…!?」


「今まで知ることがなかったその温かさに、怯えてるだけ。なので、どうか可能な限り愛してあげてください。」





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