(二)この世界ごと愛したい
おーちゃんは照れたり驚いたり、表情豊かで可愛い。
カイは久しぶりに再会したママに、未だ目を奪われて逸らせずにいる。
「…それはええけど。お嬢のこと好きなん俺だけちゃうし。」
「ええ。ルイは問題ございませんし、レン様もお心変わりなければ嬉しいことです。」
「いや、まだまだおるけど。」
「詳しくお伺いしたいですっ!!!」
ママにこの手の話はしちゃいけない。テンションが大変なことになっている。
それを流石にカイが見兼ねる。
「ラン、落ち着け。てか来るなら来るって前もって言うといてくれ。」
「カイセイ様を驚かせようと思ったんですけど、お困りになりましたか?」
「来るのはええけど心臓に悪いから先に一本連絡くれ。」
「…リンには、まだ内緒なんですか?」
カイが王様なんてやってることを、私に黙っておくのかと訊ねるママ。
「内緒…って言いたいけど、あの子鋭いからな。薄々もうバレてる気もするわ。」
「気付いていたとしてもこの場を私に頼んだと言うことは、暴くつもりはないんですよ。あの子は特別優しいので。」
「…せやな。いつかは俺から話さなあかんな。」
ママはふわりと微笑んで、踵を返す。
「リンのこと、よろしくお願いいたします。」
「もう帰るん?」
「護衛も断って来てしまいましたし、アルも心配するのでお暇します。」
「…さよか。オウスケ、馬車まで付き添ったって。」
他国の国王に会うため護衛も付けずに来てしまったママを案じて、おーちゃんに送らせようと考えたカイ。
おーちゃんはそれを聞いて笑う。
「自分で送ったれよ。」
「俺が行くとややこいやろ。」
「今はただのカイやん。バレへんって。俺も遠巻きに気を付けとくし。」
「…はぁ。」